Temo che combatterò la primavera in blu.

ほとんど昔の、嘘と本当の交じった日記

西谷星川

 久しぶりに相鉄線に乗った。高校生の頃は、毎日通学で利用していた。しかし、社会人になった今では相鉄沿線は生活圏内から外れてしまい、次第に利用することも少なくなった。二俣川を発車し、横浜へ向かう快速急行。夕方、西陽が容赦なく差し込んで、視界の中で白飛びする街並み。誰もロール・カーテンを下さない。車窓の枠に切り取られた光と影のコントラスト。逆光の中で目を細めて、あの頃のことを思い出していた。

 西谷星川あたりの街並みが、車窓を流れては消えていく。このあたりの駅には一度も降りたことがない。たぶん、なかったと思う。あの頃と同じように窓の外を過ぎていく。僕にとってはただの灰色の風景。透明かもしれない。なんでもない。どんな人が住んでいて、どんな建物があるかも、一度も気にしたことがなかった。記憶に残る風景ではないけれど、好きだった。あの頃はよく、シートに肩を並べて、眺めていた。胸が詰まる。僕の家は横浜方面ではない。だけど、毎日のようにこの電車に乗っていた。

 僕は些細な出来事を忘れてしまうことがある。こんな事あったよねという問いに、「あ〜!そんなことあったな!」と返すことはしばしば。よー覚えてるな、とデリカシーなく返事をしてしまって、機嫌を損ねてしまうこともあった。良くなかったな。小さな出来事をいつまでも覚えているのは、それはその人にとって特別に輝いて残った思い出だったということなのかな?お守りのように大切にしてくれてたのだろうか?僕も相鉄線の逆光の中で、眩しいと笑う顔を覚えている。

 西谷とか星川とかさ、降りたことあるっけ?覚えてないか。なんかあったような気もして。覚えていたらその時のことを教えて欲しい。