Temo che combatterò la primavera in blu.

ほとんど昔の、嘘と本当の交じった日記

こけこっこ

 今朝は漫画みたいに鶏が鳴いたから気分がよかった。仕事に向かう足取りも少し軽い気がした。久しぶりに実家に戻っていたのだが、地元の町も大きな変わりがなくて安心した。うちの町内には小さな牧場があるのだ。近くを通れば牛や鶏の鳴き声が聞こえる。そんで決まって家畜の臭いがする。これがなかなかに厄介もので、夏の雨の日なんかむんとした空気に混じってその臭いは町内中にデリバリーされる。牧場からだいぶ離れた我が家にさえ鮮度の高い状態で届けられるのだから、近所に住む人は年柄年中鼻をつまんで生活してるんじゃないかな。失礼か。人は田舎かよと思うかもしれないけど、うん、紛うことなき田舎なんだと思う。(本当の田舎の人に馬鹿にされるやつだ)

 高校生の頃、学校の近隣にも豚だか何かを飼育している場所があった。そこも同じように家畜の臭いを町に漂わせていて、高校名を冠して〇〇臭なんて呼ばれて多くの生徒の反感を買っていた。でも僕はその臭いには慣れ親しんでしまっていたから、ぶっちゃけ殆ど気にしたことがなかった。寧ろ、嫌いじゃなかった。心が和んでいく気さえする。都会の空気、満員電車の臭いの方がよっぽど苦手だ。牧場が歩いて行ける距離にあるなんて、考えてみれば物語の世界みたいで結構いいと思う。青空と入道雲、蝉の声、喉に刺さるサイダー、麦わら帽と白ワンピースの少女、終わらない夏のイメージ。朝にコケコッコーなんてベタな導入ではあるけれど、退屈な日常が一転するような何かが起こる予感に胸が高鳴る。まあでも、かなり臭いことは臭いんだけどね。